青山ゼミの10年間を振り返って
私が青山ゼミというより、青木先生と出会ったのは、今からちょうど10年前のことでした。この時が初めてだったにも関わらず、その頃私が通っていた塾がちょうど青木先生の出身の塾であったことから、話が弾んだことを覚えています。この偶然の出会いが青山ゼミの出発点でした。
私が中学生の頃の青山ゼミは、まだ少人数でしたので、五教科全部を青木先生にマンツーマンで教わっていました。
中学3年生になったある日、2週間程入院しなければならないときがありました。普通の塾であれば、生徒が入院している時は、プリントだけ送られてきて、「自分でやっときなさい。」というのが当たり前ですが、青木先生は、この私が入院している間、毎日毎日、教材を持ってわざわざ病院まで駆けつけてくれました。この時の感謝の気持ちは、受験生なのに2週間も入院して焦っている私にとって、とても言葉では言い表せるものではありませんでした。
こうして高校受験の時期がいよいよやってきました。私は大濠高校と修猷館高校を受験する予定でした。大濠高校の入試のほうは無難に終わりましたが、その頃は偏差値が70以上あったので、修猷館も大丈夫と油断している自分もいました。しかし、修猷館は失敗してしまいました。今思えば、この失敗は苦手だった英語を最後まで先送りし、克服していなっかたという自分の実力のなさ、甘さが原因でした。
高校入試を控えているゼミ生の皆さん、とにかく基本をしっかりと固めてください。「苦手である。」というのは、基本ができていないということなのです。そして、入試にはその分野が必ず出題されるものです。とにかくゼミを信用し、もらった問題集を徹底的に仕上げてみて下さい。その頃には驚くほど力がついていることと思います。
大濠高校に入学した私でしたが、入学早々、壁にぶつかってしまいました。「自分は修猷館に行くべき人間だったんだ。大濠だったら余裕で成績優秀者だ。」と、ここまでの自信過剰な気持ちではなかったにしても、少しはこういった情けない気持ちを持ち、怠惰な勉強をしていたのが、壁にぶつかってしまった理由です。この壁とは、中学の数学と高校の数学との違いです。中学までは好きでもあり得意でもあった数学でしたが、高校の数学は全くと言って良い程解けませんでした。1学期には赤点を取ってしまうほどでしたから……。
「チャート式(問題集)を徹底的に解いていこう。」
高校一年生の夏休み直前に、青木先生にかけていただいた一言です。この一言がなければ、私の九州大学受験の成功はなかったと思います。高校生活で最も勉強したのは、入試直前ではなく、この高校一年生の夏休みだったと思います。この時は、とにかくチャート式の問題を1問1問丁寧に、時間で言えば、1問に30分から60分をかけて解いていきました。解答・解説を読む時にも、この行では何が言いたいのか、この算式は何を表しているのか、について自分が理解できるまで時間をかけて進めていきました。これを毎日やっていましたから、1日最低8時間は勉強していたと思います。このおかげで、集中力とその持続力を養うことができました。
2学期になると、数学の授業が面白くてしかたありませんでした。なぜなら、聞いているだけですべて理解できるようになっていたからです。このため、ゼミでの学習時間を苦手であった英語に充てることもできるようになりました。また、成績も急上昇したことは、言うまでもありません。やはり、力をつけるためには、最初はある程度の我慢が必要です。苦しいことを我慢して耐えることで、少しずつ分かるようになり、それが解けるようになってきます。こうなれば、後は好きになって自ら進んで問題を解くようになっていきます。遊んでいるときも、確かに楽しいと感じます。しかし、その楽しみはその場限りのもので、その後には空しさしか残りません。勉強の場合、そうではなく、いつまでも持続するような楽しみを味わうことができます。最初の我慢、それに耐えられる気持ちを身につけて下さい。
私が高校二年生になってから、ゼミの生徒もだいぶ増えてきました。この頃はまだ人数も少なかったので個別に勉強するというスタイルが続いていました。今のように授業もなく、休憩時間も決められていませんでしたので、各自で勉強時間・休息時間を設定し、自由なスタイルで学習していました。しかし、夜11時までは誰一人として他の人と私語をせず、11時を過ぎてから上級生や下級生が入り乱れて会話するというケジメある雰囲気がありました。誰一人として自由をはき違えている人はいませんでした。
話を私のことに戻したいと思います。高校2年生から3年生の夏休みにかけては、前述した内容の学習のまま、勉強していましたが、やはり英語の力不足がひびき、第一志望のC判定が続いている状態でした。そこで、高校三年生の夏休みに英語の問題集を一冊だけ丁寧に仕上げることにしました。このおかげで、夏休みが終わった頃には、英語の苦手意識はなくなり、好きな教科へと変わっていきました。そして、10月頃の模試では判定がAへと変わりました。
いよいよ九州大学入試直前、それでも、私は受験勉強をそれほど苦痛に感じませんでした。理由は色々あるとは思いますが、最大の理由は高校1年生の夏休みでの頑張りにあったと思います。チャート式という問題集たった一冊を丁寧に仕上げたこと、これだけで九州大学入試の成功をつかみました。
あの青木先生の一言は、一生忘れません。本当にありがとうございました。
ここで、後輩である青山ゼミ生全員にエールのつもりで勉強法について少し述べたいと思います。
まずは暗記について。暗記は繰り返すことでしか定着しません。
例えば、「3日前の夕食は何だったか?」という問に答えられる人は、そうはいないと思います。ところが、何年も前の思い出を聞くと、答えられない人はいません。これは、何度も繰り返し思い出しているかいないかの違いです。
また、暗記には、ある程度の理解も必要です。
「31283130」という数字を見てすぐに覚えられる人はほとんどいないと思います。しかし、1月から4月までの日数という理解が伴えば、あっという間に覚えられます。
次に数学について。
これもまた、理解した上での日々の繰り返しが大切です。そして、ただ問題を解くだけではなく、解答・解説を隅々まで丁寧に読み理解することも必要です。とくに、一、二年生で受験まで時間がたくさんある人はこれを実行してみて下さい。高校の数学ですらたった一冊の問題集で克服できるのです。とにかく1冊を丁寧に仕上げることです。
このように言うと、全然役立つ話ではなかったと思われるかもしれません。確かに、勉強を楽にする方法ではないと思います。というよりは、勉強に楽な方法自体存在しません。前述したように、最初は少し苦労しなければなりません。しかし、そこで投げ出さず、耐えることで、いつか苦痛を感じなくなります。これが勉強法なのです。
私が青山ゼミで教師をするようになって、しばらくすると、青山ゼミでも授業が行われるようになりました。最初の頃は、同じ教室で違う学年の授業がホワイトボードを挟んで同時に進行したりと、今ではとても想像もつかないような環境で授業が行われていました。そんな環境の中でも、ゼミの先輩たちは多くが「合格」の2文字を勝ち取ってきました。小さな塾でしたが、レベルがとても高く本当に優秀でした。ゼミ生は皆よく勉強していました。今でもゼミの自習室で勉強してみたら、その雰囲気がよくわかると思います。いまは学年別に教室も分かれ、教師も多く、恵まれた環境にあります。後は自分自身の気持ちです。いろいろな誘惑に負けることなく、目標に向かって前進し続けて下さい。
最後に、青木先生、金山先生、本当に長い間、色々とお世話になりました。また、これからもご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いします。