架橋
はじめに
私は、小学4年生から6年生にかけて青山ゼミに通いました。特に受験期の6年生の時には、毎日青山ゼミで勉強していたと、記憶しています。とても緊張感のある日々でした。そして何とか、久留米大学附設中学校の合格を勝ち取ることが出来ました。私の中学受験については、以前執筆した『泣き面に破竹の勢い』に詳しく書いてあるので、そちらを参照して頂ければ幸いです。
附設入学後には、久留米から福岡の実家に帰る長期休みに、青山ゼミで個別指導を受講しました。附設のカリキュラムに私が付いていけるよう指導して頂き、附設でも上位の学業成績を修めることが出来ました。そして大学受験期には、数学に特化した個別指導で、最後まで私の受験をサポートして頂きました。青山ゼミの魅力については、他の合格体験記で様々に語られていますが、私はその中に、このようなアフターケアの充実を付け加えたいと思います。これは、生徒一人一人に全ての先生方が丁寧に向き合って下さる青山ゼミだからこそ、為せる業でしょう。
本合格体験記では、主にセンター試験・二次試験対策について詳述します。本合格体験記が、全ての青山ゼミ生の合格の一助となることを、期待して止みません。
学習にあたって
受験は厳しいと、よく言われます。しかしそれは、受験勉強自体の厳しさであって、受験制度の厳しさではありません。世にいう難関国立・私立大学の合格者は、毎年合計で4万人にのぼります。難関大学への合格は、決して不可能という訳ではないのです。しかし、実際のところ、「難関大学への合格」は、その名の通り難しい。何故か?それは、「受験勉強自体の厳しさ」にある、と考察しています。
受験勉強には、「忍耐力」が不可欠です。長時間、同じ場所に座って勉強する忍耐力、難解な問題に対し、諦めずに向き合って解きぬく忍耐力、などなどです。これは、勉強するという行為の反復を通じて、徐々に身に着けていく他ありません。一方、スポーツには体力が不可欠です。体力は、日々のランニングや筋トレで向上させることが出来ます。そして、それを活かして、野球やサッカーなどの競技にあたります。ここに一つ、勉強とスポーツの相違点を見出すことが出来るでしょう。即ち、勉強の不可欠要素である「忍耐力」は勉強それ自体を通してしか身に着けることが出来ないが、スポーツは、筋トレなど競技それ自体とは別の方面で、その不可欠要素である体力を鍛え上げることが出来る、という違いです。つまり、勉強においては、勉強それ自体を真剣に始めるにあたっての準備(「忍耐力」の強化)が、一切できないということになります。だから最初は、解けないどころか、忍耐力の不足故に勉強も捗りません。一方野球では、打てなくても、体力を事前につけておけばスイングの練習を長時間出来るのです。ここに、勉強それ自体の、圧倒的な厳しさがあると、私は考えています。
僭越ながら、保護者の皆様に、ご子息ご息女への学習指導に当たってのアドバイスを申し上げます。とにかく、ご子息ご息女が、「忍耐力」をつけるまで、待ってあげて下さい。最初は、上記の理由から、勉強をすぐに放り出してしまうことでしょう。実際、私もそうでした。そこで、保護者の方は、ご子息ご息女を怒らずに寄り添って頂きたいのです。上手く怒る役目、「忍耐力」を上手く身に着けさせる役目はゼミの先生方が担うはずです。そして、少しずつですが「忍耐力」がついていき、より長く勉強に集中できるようになります。そうすれば勝ちです。4万人の成功者のうちの一人に、きっとなれるはずです。
センター試験・二次試験対策
◇国語
・現代文
現代文では以前に同じような文章を読んだ感覚、既視感が大切です。既視感は文章理解を円滑にし、解答作成により多くの時間的余裕をもたらしてくれます。既視感を試験本番で得る可能性を高めるためには、多様な文章に触れておく必要があるでしょう。
センター試験は、過去の本試・追試問題を最低20年分は解きましょう。その中で、選択肢の正誤判定に慣れることが最も重要です。また、各予備校が実施するセンター模試では、国語の選択肢の構造が本試と異なるため、結果が芳しくなくても落ち込む必要は一切ありません。過去問でどれだけ正答できるかが大切です。
二次試験について、各大学には頻出のテーマ、問題形式があります。各大学の過去問をより多く、深く読み解き、設問に対して自分の言葉で表現できるよう訓練して下さい。意見が分かれるところではありますが、私は、題名→設問→本文の順に読むことを勧めます。何に着目して読めばよいかが最初から分かっていることは、大きなアドバンテージになります。また、設問を読んだ段階で、「なぜか」と問われた設問の解答欄の終わりに「から」、「どういうことか」の問いには解答欄に「こと」を事前に書くことをお勧めします。文末ミスで悔しい思いをしなくて済むでしょう。
・古文、漢文
中学生や高校1・2年で習う単語・文法が実はとても重要で、受験期にも後を引きます。定期考査でその都度、単語・文法を吸収していって下さい。また、古文単語は一度覚えてもなかなか記憶に残らず不安を覚えますが、単語帳を何周もするうちに自然と覚えられます。
センター試験対策については現代文と同様です。二次試験対策についてですが、東大に関していえば、古文漢文の本文の難易度自体はセンター試験と同等もしくはそれ以下です。しかし、誰かが記述した選択肢を判定する「読解力」の次元から、自ら書き記す「表現力」、それも端的かつ網羅的に述べる高度な「表現力」の次元に至らなければ、東大国語を攻略することはできません。一方京大では、解答欄が異常に長く、多様な表現を取り入れた答案を求めてきます。先述の通り、各大学には独特の問題形式があり、それに自ら寄り添っていくことが合格の近道です。
私のセンター試験の解答順序と時間配分…
四、漢文(15分)→三、古文(20~25分)→一、評論文(20~25分)→二、小説(20分)
◇数学
高2の冬頃から『大学への数学 一対一対応の演習 数学Ⅱ』『同 数学B』(東京出版)を解き始め、高3のゴールデンウイークには解き終えることが出来ました。夏休みは『文系数学のための良問プラチカ
数学Ⅰ・A・Ⅱ・B』(河合出版)を毎日2・3問解いて、数学力が衰えてしまわぬよう気を付けました。冬休みはセンター試験対策に注力しました。センター試験以後は『東大の文系数学25カ年』(教学社)を解き続けました。
数学は、守りに入ってしまうと高得点に繋がりません。これと決めた問題を無心に解く、これを繰り返して下さい。攻める姿勢を忘れないで下さい。
センター数学に関して、同輩たちの多くが模試等で9割越えを記録する中、私はなかなか9割以上を取れずにいました。焦った私は、青山ゼミの個別指導でセンター数学のコツを教えて頂き、冬休みには過去問をひたすら解きました。すると安定して9割以上を取れるようになったのです。要は、慣れです。センター数学はパターン化しており、それに瞬時に反応できるよう訓練すれば、高得点を狙えるようになるでしょう。また数学Ⅱ・Bにおいて選択問題である大問5に確率変数が設置されています。この分野は経済学部生が必ず学ぶ統計学の基礎であり、また、同じ選択問題である大問3の確率や大問4のベクトルに比べ、比較的簡単な設問が並びます。経済学部を志願する受験生諸君にはお勧めです。
二次数学は小手先のテクニックが一切通用しません。授業の予習教材や上述した問題集を日ごろから丁寧に解き、解けたという成功の体験を、出来るだけ多く積みましょう。また難問に固執せず、易問を選別してそれに集中するのが賢明です。しかし同時に、攻める姿勢を持たねばなりません。1完や2完で安堵せず1点でも多く稼ぐ気持ちを忘れないで下さい。
私のセンター試験の解答順序と時間配分…
数学Ⅰ・A‥配置された大問順に各大問10分を目安に解く。残り10分で見直し。
数学Ⅱ・B‥大問1(12分)→大問2(12分)→大問3~5の内、易しそうな2題を選択(5分)→その2題を各15分で解答
◇英語
授業の予復習を欠かさず、毎定期考査の内容をしっかりと定着させて下さい。そうすれば、受験期に英語に費やす時間が減り、他科目(特に社会)により多くの時間を配分する余裕が生まれます。
しかし、最終的な英語の実力は英文に触れる時間に比例するため、受験期には『英語長文問題精講』(旺文社)を日常的に読むことを勧めます。さらに、ラジオ講座を毎日聴くようにして下さい。
センター英語(筆記)の対策について述べます。高2段階で170点以上取れる方は、特別なセンター対策をせずとも、高3での演習を通じて本番で190点以上取れる実力がつくでしょう。一方、センター英語が苦手でなかなか点数が伸びないという方は『Vintage』(いいずな書店)などの英文法・語法書を徹底的に覚え尽くして下さい。そうすれば、大問1・2を瞬殺し、配点の高い大問4~6をじっくり解くことが出来ます。時間さえかければ、大問4~6は充分に対応できるはずです。但し、大問3では国語力が必要な問題が出題されるため、大問3が苦手という方は英語力以上に国語力を磨くべきでしょう。
センター英語(リスニング)では、常に問題文を先読みし聴く的を絞ることが大切です。また集中力が最も差をつけるポイントになります。30分間、集中力を切らさずに聴き続けられるよう訓練して下さい。
二次英語で最も重要な力は速読力だと思います。速読力を上げるためには、多読しなければなりません。多読する際に重要なことは唇読しないことです。よく、口を動かしながら英文を読んでいる人を見かけます。慣れないうちは仕方ないでしょう。しかしこの唇読は、読むスピードを確実に下げています。今この合格体験記を読んで下さっている方の内、唇を動かしながら、という方はほぼいらっしゃらないでしょう。目で追っているはずです。これと同じ感覚で英語を読んでいくことが速読の鍵となるでしょう。また、無知の単語、理解し難い英文が出てきても、止まらずに読み進めることが大切です。無知の単語は、続く英文を手掛かりにその意味を類推することが出来ます。殆どの英文は抽象→具体の構造を取ります。理解し難いセンテンスも、あとに続く具体例を読めばイメージし易くなるでしょう。
私のセンター試験の解答順序と時間配分…
大問1(5分)→大問2(10分)→大問3(10分)→大問4(15分)→大問5(15分)→大問6(15分)→見直し(10分)
◇社会
インドはかつて棒状の大陸でした。これがユーラシア大陸に縦方向に衝突して、ヒマラヤ山脈、チベット高原を形成し、さらに北方では古期造山帯のクンルン山脈とテンシャン山脈を隆起させました。クンルン山脈とテンシャン山脈の間は当然盆地(タリム盆地)であり、隆起したことで下降気流が生じやすくなり乾燥します。これにより、タクラマカン砂漠が出来ました。また、両山脈の山麓には融雪水が流れ、オアシス都市が発達し、世界史上とても重要なシルクロードを形成しました。
一方、棒状であったインドでは、チベット水系で河床勾配の大きいインダス川とガンジス川の強い侵食作用により、長い年月を経て両側に広大な平野が形成され、今日の三角形に近いインドに繋がっています。棒状であった名残は、地図帳のインドの白い部分(標高が高い)にくっきりと表れています。
また、インダス川が作り出した平野では、世界四大文明の一つ、インダス文明が栄えました。インダス文明から約2000年後、グプタ朝時代のインドではゼロの概念が生まれます。ゼロとはインド人が作った人工物です。だから通常、自然数に含まれることはありません。さらにインドは、19世紀中頃~第二次世界大戦終結の2年後までイギリスの支配下にありました。これらの世界史的事実は、インド人が理数系に強く英語を公用語とするため良質な労働力である、という地理での学習事項を想起させてくれます。
以上のように地理的事象と世界史的事実が相互に連関する例は豊富にあり、それらが両科目の定着に寄与してくれることでしょう。
・地理
メルカトル図法の世界地図を手に取って見て下さい。いま、「日本とニューヨークまでを最短距離で結びなさい」という問題に対して、地理を学習していない方は両都市を直線で結んでしまうかも知れません。しかし正解は大圏コースと呼ばれる曲線なのです。これは一見遠回りである道筋が、実は近道であるという、地理学習の根本を突いた事例だと思います。
地理は、自然地理・系統地理・地誌地理の3分野で構成される文理混合科目です。自然地理は地学的な要素が強く、他の2分野の土台となります。自然地理を固めることがとても大切です。
センター地理対策については、過去問を丁寧に解いて、解説を熟読することが重要です。特に、解答を熟読するという努力を怠らないことが、高得点に繋がると思います。そうした地道な努力がやはり、地理を学ぶ道であるように思います。
二次地理では、基本的な地理用語を正確に理解し、それらを散りばめて(地理だけに…)論述しなければなりません。私は高3の夏休みに『東大地理問題演習』(東進ブックス)をやり終えました。計121問という充実した内容であり、やり通せばかなりの自信がつきます。またほぼ全範囲の地理用語を整理する上でも効果的です。論述対策本としては他に『納得のいく地理論述』(河合出版)がスタンダードでしょう。
・世界史
世界史は範囲が膨大です。覚えるべき用語が沢山あります。ここで重要なことは、まとめノートを肉筆で作成し、それを何度も読むことです。覚えることに拘泥していては、歴史の流れを見失いがちになり、結果的に論述問題に対応できなくなります。まずは繰り返し読んで全体像を掴む。そのあとに覚え始めることを勧めます。そうすれば、覚えるという行為の負担が少しは軽減されることでしょう。また肉筆ほど親しみやすい、即ち頭に入りやすい文字はありません。覚えるべき用語・文章はすべて肉筆で書き、それを何度も読み返して下さい。
センター世界史は慣れだと思います。私もセンター2カ月前には70点台を連発して相当焦りましたが、本試、追試、実戦パック合わせて約20年分解いた結果、本番では97点を取ることが出来ました。
二次世界史の論述については、私は高3の夏休みに『詳説世界史論述問題集』(山川出版)を近現代史以外やり終えました。基礎的な論述方法を習得できたと思います。論述問題集を一通り終えたあとは、過去問や模試の問題を当たるのがセオリーでしょう。
私のセンター試験の解答順序と時間配分…
地理:計6個の大問をそれぞれ10分ずつかけて解きます。集中して急ぎ目に解かないと間に合いません。
世界史:少なくとも2周はできます。
◇理科
・センター試験 生物基礎
覚える量が多くて苦しみました。また、呼吸・光合成とATPの関係性については、理解するのに時間がかかりました。図説を参照すると、細胞の構造や上記の関係性をより視覚的に把握でき、覚えやすく且つ理解しやすいのでお勧めです。生物基礎の過去問は少ないので、予想問題集を活用しましょう。私は『マーク式総合問題集
生物基礎』(河合出版)を使用しました。解説がしっかりしていて、知識の最終確認にピッタリの教材です。
・センター試験 地学基礎
骨のある科目です。ティラノサウルスの化石標本ができるくらいに。でも骨(コツ)さえ掴めば充分に対応できます。骨というのは、地学における大まかな数値を暗記することです。地表から外核と内核の間までが5100km、マントルと外核の間までが2900kmといった具合に、です。大変ですが覚えるしかありません。
また、先述の通り、地学は自然地理との関連が非常に深いです。地学を学べば地理の成績も上がるので、地理選択者にとっては一石二鳥です。
私のセンター試験の解答順序と時間配分…
生物基礎、地学基礎→時間的な余裕は充分にあります。
一橋大学の雰囲気と制度的強み
一橋大学のキャンパスは緑に恵まれており、近所の幼稚園児とその保護者、小学生、ご高齢の方々などの、憩いの場として開かれています。言うなれば、いつ来てもオープンキャンパスです。
一橋大学の強みは、何といっても同窓会組織「如水会」でしょう。如水会は「世界一後輩思いの同窓会」というキャッチフレーズを掲げており、様々なイベントを一橋生に提供してくれます。如水会主催の講義「社会実践論」「如水ゼミ」では、各界で活躍されている一橋OB・OGが毎週いらっしゃり、どうすれば社会で活躍できるのかをレクチャーして下さいます。さらに、如水会館では新入生歓迎パーティーが開催され、新入生は豪華ディナーを無料で食べることができます。如水会館は、結婚式に利用されるほどに美しく、素晴らしい建物です。初めていらした方はきっと驚くことでしょう。
留学制度も充実しています。一橋大学の留学率は日本一だそうです。これは、一橋の総学生数が少ないからという理由も考えられますが、なにより、学校側が主体的に派遣留学・交換留学を推奨し、留学費用の一部を負担してくれていることに由来しているでしょう。また、如水会も留学費用の一部を提供してくれます。実際、私もこの夏1カ月間、ビジネス英語を学びにペンシルベニア大学に留学します。
また、商学部には渋沢スカラーシッププログラム、経済学部にはグローバルリーダーズプログラムという制度があります。これらは一年次の成績優秀者を選抜し、短期海外調査や学部科目の英語での履修などを実施する、所謂グローバル人材を育成するプログラムです。このプログラムは法学部・社会学部でも来年から開設予定です。
さらに、一橋大学では学部間の垣根が低く他学部の学部科目を履修することが可能です。学生に多角的な視点を与えるためにこのような制度が整備されています。
この合格体験記を読んで下さった方で一橋大学に入学された方は、是非、合唱団ユマニテの部室にいる私のところまでいらして下さい。履修の組み方や新生活について相談に乗りましょう。何せ私は「世界一後輩思いの同窓会」の一員ですから。
終わりに
私は、前期試験で東京大学文科Ⅰ類を受験し、落ちました。そして、後期試験で一橋大学経済学部を受験し、東大落ちの理系もひしめく高倍率の中、なんとか合格を勝ち取ることが出来ました。
無常。それは、私たちに死を想起させる言葉です。しかし同時に、生きる上でとても大切な指針を伝えています。常態はあり得ない。「無常」は、落ち込んでいる時にはそれが一時的なものであり、必ず浮上出来るという励みの言葉に、調子のよい時には今後もそれが続くとは限らないという戒めの言葉になるのです。私は絶望の中、この言葉に助けられ、最後まで諦めることなく、一橋の問題と向き合い、合格を手にすることが出来ました。「無常」。それは、絶望を希望へと架橋する言葉です。
私を9年間にわたり支えて下さった青山ゼミの先生方、そして、いままで私を見守ってくれた両親に心から感謝します。有難うございました。
最後に、後輩たちへ。
諦めと油断ほど、合格を遠ざけるものはありません。どうか、諦めと油断に陥らぬよう「無常」の言葉を忘れないでほしい。どうか、勉強の反復を通じて「忍耐力」を養成していって欲しい。その先に、合格の二文字があります。